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2008年6月14日 (土)

『ザ・マジックアワー』 やっぱり三谷が大嫌い

 私はコメディが大好きである。特にニール・サイモンは『グッバイガール』以来大ファンである。
 ジーン・サックス『裸足で散歩』『おかしな二人』、ハーバート・ロス『カリフォルニアスイート』『わたしは女優志願(映画に出たい)』や『泣かないで』(ジンジャーブレッドレイディ)『第二章』など芝居が原作の作品から、『キャッシュマン』『昔みたい』、クラシックミステリーのパロディ『名探偵登場』、『マルタの鷹』『カサブランカ』などのパロディ『名探偵再登場』、オリジナルも大変面白かった。『ブライトンビーチ』『ビロクシーブルース』、自伝ものも好きだ。思いつくまま書き出しても、このくらいある。
 早川書房の戯曲集は何回読んだか数知れず、テアトルエコーの熊倉一雄・納谷悟朗『サンシャインボーイズ』も楽しかった。仕事でお会いした納谷さんには、ニール・サイモン戯曲集第一巻にサインしてもらった。
 不器用な生き方の主人公が人生の再出発にチャレンジするプロットが多い。アルコール依存症(『泣かないで』)、愛妻に逃げられたサラリーマン(『おかしな二人』)、愛妻に先立たれた作家(『第二章』)、振られ続きの売れないダンサー(『グッバイガール』)、鬱の中年(『二番街の囚人』)。シャレた台詞で不遇に毒づき周囲を巻き込みながら、やがて主人公たちが生きる力に目覚めてくる、いかにもアメリカらしい世界観が素晴しいと思う。

 シド・シーザー門下でサイモンの先輩になるメル・ブルックスも好きだ。
 『ヤングフランケンシュタイン』『新サイコ』『サイレントムービー』『ブレージングサドル』『珍説世界史パート1』そしてなにより『プロデューサーズ』(オリジナルもミュージカル版も)、それぞれ楽しかった。
 西部劇のパロディ『ブレージングサドル』、『世界史』は、アメリカ風すぎてそう面白いものではないが、『世界史』でブルックスのチャールトン・ヘストン風のモーゼが、3枚かかえていた<5戒づつ書かれた石板>を一枚落として割ってしまい十戒になるギャグは、おなかが苦しくなった。
 パロディがベースの作品が大半なので、日本人が観ると分かりづらい部分が多いものの、ブラックなユーモアは素晴しい。おぞましい世界の『プロデューサーズ』(オリジナルもミュージカル版も)は傑作である。
 ルビッチ『生きるべきか死ぬべきか』のリメイクは、この人がいかに映画をよく知っているかが分かる秀作である。

 ポリスアカデミーシリーズも何本か観た。バカバカしくてもそれなりに面白かった。
 
 『釣りバカ日誌』も、西田敏行と三国連太郎の安心して観られる芝居は入場料の価値十分、観客を楽しませようと云う熱意が伝わる立派なもの。だてに、長く続いている訳ではない。
 
 さて本作。
 ニール・サイモンやビリー・ワイルダー好きな人の作品とは、とても思えない。リアルな現実社会との整合性やドラマのリアリティを無視したコントの羅列である。映画にさえなっていない。
 笑えるどころではない、観客をバカにしたストーリー(と云えるかどうか)に不愉快さしか感じなかった。
 ヤクザの親分の求める殺し屋として売れない役者を騙して代役させ、映画撮影と称して親分との面会をゴマかそうと云う発想は、吉本新喜劇の「ほな、こないしよう!」のアイディアより説得力がない。

 熱演の佐藤浩市が哀れでさえある。

 深津絵里の色気も華も演技力もない無惨さ。

 また、<マジックアワー:魔法の時間>の意味まで曲解している。マジックアワーとは、日没後や日の出前の、空を反射板として大地が間接照明される時間帯のことで20分ほどあり、<一瞬>ではない。映画ファンにはテレンス・マリック監督の名前より撮影監督アルメンドロスで有名な『天国の日々』で知られている。
 
 映画やコメディに対する冒涜、観客への傲慢さだけの2時間20分。

 これは食べ物で云えば、化学調味料たっぷりの食事である。美味しいと感じる人は、テレビドラマと云うフジの素(ふじのもと[意味]お台場のテレビ局製造の化学調味料)に慣れすぎて舌が麻痺しているのだ。わるいことは云わない、天然だしのサイモン作品を観て舌を洗って欲しい。

 観た後、気分が悪くなった。
 料簡が狭い『実録・連合赤軍』、趣味が悪い『ノーカントリー』であるが、少なくても監督の腕は一流。本作の気持ち悪さは、映画になっていない映画、コメディを装ってコメディになっていないものを観せられたことが原因。長い間映画を観てきて、胸が悪くなるような不快感をおぼえる作品は初めて。
 いや、もうひとつあった。『有頂天ホテル』があった。

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コメント

はじめまして、おじゃまします
「釣りバカ日誌」をお褒め頂、ありがとうございますhappy01
伊達に20年も続いているわけではありません
たしかに、好き嫌いはありますので、釣りバカが嫌いと言う人もいらっしゃると思いますthink
西田敏行さんが嫌いと言う人もいらっしゃいますweep
まぁ それはそれとして・・・smile
私西田敏行さん大好きおばさんですlovely
ただ「マジックアワー」の西田さんは受けの演技でしたが、西田さんだからこそできる、そのとき、そのときの表情、間、リアクションが絶妙だったと思います
ついでに 映画「相棒」は西田さんがスクリーンに登場するまでの、退屈な時間を乗り切れば、西田さんの演技に涙し、大満足で、帰途につけました。
私も「有頂天ホテル」はなんだかなぁ~think
どうして、この映画が人気があるの?と不思議でした
何が言いたいの?みたいなコメントになりました
ごめんなさいhappy02

キャサリン 様
 駄文をお読みいただきありがとうございます。
 『釣りバカシリーズ』は、立派な仕事だと思います。東京に本社を置く中規模ゼネコンの社長と社員が、会社には内緒で、地方で釣りや日常生活から少しだけ離れた冒険を楽しむ。この、現実にはありえない<ファンタジー>を、「あるかも知れない」と納得させているのが、名優西田三国のご両人の存在感と演技力だと思います。作為すら感じさせない二人の芝居の凄さです。

 三谷作品は、DVDで『ラジオの時間』を見始め、あまりのつまらなさに10分で止めました。どうも、好きになれなかったのです。それでも『有頂天ホテル』を観たのは、伊東四朗と西田敏行が出ていたからです。
 ところが、いるだけでおかしい伊東には白塗りになって逃げるだけと云う役しか与えず、西田も演歌の大御所と役は素晴しいのに、首にマフラー(でしたっけ?)巻いて自殺をはかり、「圧が!圧が!」と叫ぶ以外、まったく笑えませんでした。
 キャストの中で別格の二人を、宝の持ち腐れのような扱いにすることにセンスを疑いました。

 釣りバカの宴会シーンを観るたび、この人が超一流のミュージカルスターであり、この才能を思う存分楽しめる企画はないのか、といつも思います。
 『鴛鴦歌合戦』と云う時代劇ミュージカルを、ご存知ですか。
 ディック・ミネが<♪〜僕は若い殿様・・・>とスウィングしながら歌うのですが、このシーンを観るたびに、「西田敏行でリメイクしたら、さぞ凄い作品になるのに」と想像してしまいます。
 西田敏行主演のミュージカル映画が実現することと、次に三谷からオファーがあったら断ってくれることを願うばかりです。

投稿: キャサリン | 2008年6月14日 (土) 20時25分

「釣りバカの宴会シーン・・・」のところ、私も常々思っていました
西田さんの歌をもっと、もっと聞きたいなぁ~って
「釣りバカ9」で同期の馬場部長に連れられ、意中の人のバーへ行ったとき、二人へのプレゼントとして唄った歌、もっと聞きたいと今でもDVDを見るたび思います
最近は年のせいで少々声量に衰えありやと、気にしていましたが、先だって上映された「丘を越えて」の中ですばらしい声量で唄っているのを聞き、うれしくて、感動して、涙ぐんでしまいました
「花のお江戸の釣りバカ」ではオーソレミヨ(?)を唄っていましたが、歌詞も楽しくって、歌もさすがで大好きなシーンのひとつです
『鴛鴦歌合戦』は知らないのですが、是非見たいものです。
西田さんは時代劇が大好きだと言ってましたし、唄も大好きだと思うので、これってすごいことではないでしようか
なにか、アプローチできることはないのでしようかねぇ~


キャサリン 様

 わたしは『釣りバカ』を7、8本しか観ていなくて、ごっちゃな印象になっています。「♪釜石ナンバーワン〜」が一番おかしかったです。
 『釣りバカ9』『花のお江戸』、今度観てみます。
 『丘を越えて』なる作品、知りませんでした。西田の菊池寛とはきっと見物ですね。当地福岡では、公開が終わっていました。DVDを待ちましょう。

投稿: キャサリン | 2008年6月15日 (日) 22時02分

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