『トランスアメリカ』 <小さな映画>の楽しさ
トランスセクシュアル(生まれもった性に違和感を感じ性転換手術を望む)の中年男が、手術直前になって、若かりし<男時代>につき合っていた女性が生んでいた息子と珍道中するハメになるお話。
低予算作品ながら、ユニークなアイディアを生かした見応え十分の佳作。『リトル・ミスサンシャイン』『サイドウェイ』『ジュノ』など、最近アメリカ映画はこの手の地味な作品の方が面白いなあ。
なにより、ドラマがしっかりしています。
成功の一番の要因は、ヒロイン(ヒーロー?)の造形。20年前のジュームズ・ウッヅを貧相にしたような風貌や筋肉質の二の腕、ぎこちない声色、困った時に見せる大股開きなど、フェリシティ・ハフマンが、実際のトランスセクシュアルにリサーチした存在感を見事に作り上げている。世評の高い『メゾン・ド・ヒミコ』、ちゃんとリサーチしたのか知らないが、入所者や施設のリアリティがなく興ざめでした。
主人公の恋愛事情を扱わず、過去の人生に対する責任を全うしていくストーリーに絞り込み、ロードムービーにしているのも面白い。母親に自殺され継父に性的虐待を受け両刀使いになった息子を、素姓を開かせないまま、理解していこうと四苦八苦する。
ストーリー展開や出会う人々とのドラマも自然。
メキシコ料理店のウエイトレスで稼ぎながら、大学で学位をとり教職につきたいくらいだから、きわめて知的な主人公。刑務所暮らしを経験したネイティブアメリカンの中年男に上品な恋心を寄せられるシーンもホロっとくる。
久しぶりに<女として>里帰りし両親を嘆かせ、愛人だと勘違いしたティーンエージャーが初孫だと分かり、俄然態度がかわる母親。教会のボランティアだと思っている主人公の優しさに息子が気がつき、愛情に応えるためベッドで言寄るおかしさ。
<性のあり方>が多様なため巻き起こる騒動を、優しく見つめながら描いている。作り手の、登場人物たち個々人の背負った人生に対する敬意があってこそ作れた作品。
ドリー・パートンの歌も素晴しい。
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