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2008年11月14日 (金)

『ブロードウェイ♪ブロードウェイ コーラスラインにかける夢』 堪能しました

 80年頃、淀川長治がニューヨークで『コーラスライン』を観てきて、姿見のような鏡を並べただけのステージで展開するこのミュージカルを絶賛していた。5・6年後リチャード・アッテンボロー監督の映画版が登場、インタビューで浮かび上がるリアルな人間像が面白く佳曲揃い(マービン・ハムリッシュ)、日本ではほとんど無名の役者たちの歌やダンスに感動した。オリジナルの演出を楽しむために、日本青年館で前田美波里が子持ちで盛りの過ぎたシーラ役として出ていた劇団四季のステージも観たが、キャスト全員のダンスと歌唱力(今云うところのパフォーマンス)が見劣りした。
 ミュージカルのバックで踊るラインダンサー8名のオーディションに挑戦する若者像を描くお話。舞台でも映画でも『コーラスライン』を観て登場人物やナンバーをあるていど理解していないと面白さが十分伝わらない一方、知っていれば見所が次から次へと出てきてあっと云う間に90分が終わる。
 原題『Every little step』は、劇中歌『One』の『every little step she takes 』から。合格までものすごい量のステップを踏むわけで、その<ひとステップひとステップ>の意味だろう。
 まず『コーラスライン』のメイキング的面白さ。自らがバックダンサーだったマイケル・ベネットが仲間を集め録音した会話から発想したことに驚いた。ゲイ、母子家庭、父親の浮気、教師によるイジメ、整形手術など生々しい若者たちのスケッチがリアルなわけで、ピュリツァー賞戯曲部門を受賞。
 メイキングとオーディションが平行して描かれる重層的な構成も見所だ。
 オープニングは、自称ダンサーが受験資格で、大勢の中から少しでも才能のありそうなダンサーを選びだすシーンに、「I hope I get it」(この仕事が欲しい)が流れてくる。オリジナルとダブってゾクゾクする。
 それぞれの役が種目だとすると、まるでオリンピックのようなトップを目指す競争も、このドキュメンタリーの醍醐味。ひとつのキャラクターを個性のまったく異なる役者たちがを、同じ歌や芝居を演じる。カットバックで交互に出して、パフォーマンスの違いを楽しめる編集が素晴しい。『カーリー・スー』の主演した女の子以外、一人として知らない役者たちの、パフォーマンスの質の高さと多様な個性、キャラクターと本人の人生がダブル役者もいる。そのモザイク的が描き方も簡潔で効果的。
 初演から関わっている、選ぶ側の演出家やプロデューサーたちが、ゲイ役の芝居に一人の観客に戻ったように落涙するのは名場面です。 
 ニール・サイモン夫人だったころのマーシャ・メイスンの意見でラストが変わったエピソードも興味深い。
 やがて、それぞれの役をたった一人が獲得し、すべてが終わる。『What I did for love』が勝者敗者の苦闘を慰めるように流れる。
 キャナルシティでもソラリアの名画座でもよいので、アッテンボロー『コーラスライン』と本作で番組を組んでくれないかしら。                  

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