映画

2008年3月19日 (水)

『モーターサイクル・ダイヤリーズ』 青年はキューバをめざす

 若き医学生時代のゲバラが、友人と夏の南米大陸を旅する、爽やかなロードムービー。
 もうちょっと、気の利いた邦題を考えつかなかったのか。

 観終わって、『セントラルステーション』の監督の作品だと分かった。
 ネオリアリズモを思わせるような作風のこの監督、人間を観る目が優しい。

 夏の南米の自然も美しく、50年代を再現するのに、街並や船までそれらしい古いものが残っているのも面白い。まだ、貧困が残っているのでしょうね。
 搾取される先住民やハンセン病に苦しむ人々など、本物が出ているので凄い。

 主人公エルネストの心に、じわじわと将来の道が見えてくる。
 本当のエピソードか知らないが、ハンセン病患者のいる向こう岸へ、無謀にも闇の中を泳いで渡ろうとするシーンなどシンボリックで巧い。

 飛び立つ飛行機を見つめるのが、今も健在の相棒だと思える老人が出てくる。リアルな描写のラストにこういった変化球は効果的。
 主人公のそれからの人生が分かっているので、小さくなっていく飛行機が遠い世界に旅立ったゲバラその人に思えてくる。

 相棒の役者の顔がオマー・シャリフに似ており、ゲバラの血縁だと知り納得。
 60年代後半のアメリカ映画『ゲバラ』でゲバラに扮したのがオマーだったから。
 リチャード・フライシャー監督のこの映画、カストロがなんとジャック・パランス!と云う珍品。タウンゼント・ハリスのジョン・ウェイン、横綱雷電の宇津井健くらい爆笑キャスティグ。

 このお話、後半、既視感がした。
 福岡出身で、ペシャワール会創設者中村哲のことだと気がついた。
 中村哲は、山登りのため訪れたアフガニスタンで、ハンセン病と貧困に苦しむ人々と出会う。ハンセン病治療をきっかけに、20数年アフガニスタンの人々のために、戦火の中、井戸を堀り、灌漑用水路をほとんど人力で切開いている。
 
 『医者井戸を掘る』『医は国境を越えて』など、この人の奮闘記は抜群に面白い。
 なにしろ、中村哲の祖父が『花と龍』の玉井金五郎。気っ風のよさや度胸の座り方は、隔世遺伝しているのだろうか。

 
 

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2008年3月 2日 (日)

発見!幻の黒澤フィルム

 黒澤明が途中降板となった『トラトラトラ!』の黒澤が監督したシーンが8〜10分程度ながら発見されそうだ。撮影したままのラッシュか、編集したものか不明だが。
 千田是也の近衛文麿と当時高千穂交易の社長だった鍵谷武雄扮する山本五十六のシーンなどだと云う。
 黒澤関係の本でも傑作のひとつ『黒澤明VS.ハリウッド』の著者田草川弘がきっかけを作ったんでしょうね。
 黒澤初のカラーでしかもシネマスコープの映像が観られることになる。
 <社会人俳優>の芝居も楽しみです。

 そんなものまで残しておくなんて、アメリカメジャー会社の凄さ。 

 2010年は黒澤明生誕100年に当たるので、記念企画のひとつだそうです。 

 亡くなった熊井啓監督が確認したと云う『白痴』完全版は、どうなったのだろう。 
 
 

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2008年2月24日 (日)

橋本忍、89歳

 芸能ニュースでリメイク『私は貝になりたい』の記者会見を観て、驚いた。
 中居正広にフォーカスされた内容だったが、橋本忍の姿が見えたからだ。
 
 10年前黒澤明が亡くなった時、弔電に
 「(略)作品の執筆者だった脚本家はおいさばらえ、病院への入退院をくりかえす私一人だけになり、お別れの会にも出席できない始末です。
 リーダーの黒澤さんにお願いします。みんなに「橋本ももう直ぐ来る」といい、私が胡座を組んでどっかり座り込む場所を一つだけあけておいて下さい。(略)」
 その後、『複眼の映像』や研究者の新書(贔屓の引き倒しのような)などで近況を知ってはいたものの、1918年生まれ今年90歳になる高齢さもあり健康が心配だった。
 元気なお姿に、安心した。

 しかし、芸能ニュースである。
 世界的な名作の脚本を数多く書いた、この名シナリオライターを出さないのである。
 リメイクの製作会見とはいえ、記者たち、スタッフ・キャストともども、橋本忍に対してスタンディグオベーションがあってしかるべきです。

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