アジア映画

2008年6月11日 (水)

『光州5・18』 映画の王道

 最近、ツマラナイ作品にばかり当たったせいもあってか、観終わって唸ってしまった。とても面白く、大満足。

 1980年軍部クーデター後の韓国光州で、民主化を求める学生たちが軍隊と衝突、市民も加わって光州自体が陸の孤島のようになり、徹底抗戦派が自治体庁舎に立てこもった結果、市民側100数十人の死者を出した、軍隊による民主化運動弾圧事件のお話。

 高校生の弟を男手一つで学校にやっているタクシー運転手の主人公、民主化運動に顔を出す看護婦のヒロイン、元軍人のタクシー会社社長、子持ちで剽軽な主人公の同僚、キザだが憎めないタクシー客、弟の高校の教師、市民運動に参加する牧師らが、事件の経過とともに、それぞれの立場で悩み、さまざまな行動に出る。それらの描写がまことに丁寧。いちいち腑に落ちるように描いている。

 ヒロインの素姓を主人公が知らないなど、韓国映画特有の説明不足や、ヒロイズムがオーバーな気もするが、かえってお国柄だと微笑ましく思えた。
 現実の事件を換骨奪胎し、多様な視点から事件を考え、テーマを噛み砕き分かり易いドラマに作り、人間を丁寧に描きながら、コメディーリリーフも駆使することで楽しくストーリーを進めていく、映画の王道のひとつのあり方をちゃんと守っているからだ。映画全盛の時代、アメリカでも日本でも当たり前のように実行されていたことです。

 この製作態度は、まったく立派。観客の常識と感性を信じる誠実さがなければできない芸当である。
 <観客に対する誠意>、今の日本映画に一番欠けているものは、これではないですか?


 

 
 

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2008年2月22日 (金)

『ラスト、コーション』 媚薬にどうぞ

 シネリーブル博多。前の席にいた、明らかに夫婦に見えない年の差カップルは、上映後足早にどこへ行ったのだろう。
 ま、そんなことは、どうでもよろしい。
 
 この監督の作品を初めて観たのは『いつか晴れた日に』。
 原作ジェーン・オースティン『分別と多感』、19世紀初頭のイングランド、姉妹の恋物語。 エマ・トンプソンの優れた脚色を得て、ジェームス・アイボリーのお株を奪うような監督ぶりに、てっきりアン・リーとはイギリスの女性監督と思ったら、台湾出身の李安だと知り驚いた。
 その後観た『恋人たちの食卓』も、また素晴しい出来。
 『グリーンデスティニー』は、日本の忍者映画が嫉妬するような<宙をかける人間>を、嘘臭くなく表現した上、青龍刀や槍のチャンバラをスローモーションという愚かなことをせず魅力たっぷりに観せ、アクション映画でも優れた仕事ができることに、さらに驚いた。
 
 さて、本作。
 『ラスト、コーション』(中国語題名『色、戒』)、『肉欲、戒め』とでも教えてくれないと、よく分からないタイトルだが、アン・リーの秀作。
 ラストがどうも腑に落ちないが、大変面白いお話に、抜群の腕を発揮する監督の演出が楽しめます。巧いものです。
 一番凄いと思ったのは、このようなポルノグラフィを含む作品を中国が撮影協力し、部分的カットながら公開したこと。
 大人の映画です。テーマや表現力において、日本の映画のほとんどが稚拙に思える。

 トニー・レオンの役は、50年前の日本映画なら森雅之ですな。
 

 

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