『光州5・18』 映画の王道
最近、ツマラナイ作品にばかり当たったせいもあってか、観終わって唸ってしまった。とても面白く、大満足。
1980年軍部クーデター後の韓国光州で、民主化を求める学生たちが軍隊と衝突、市民も加わって光州自体が陸の孤島のようになり、徹底抗戦派が自治体庁舎に立てこもった結果、市民側100数十人の死者を出した、軍隊による民主化運動弾圧事件のお話。
高校生の弟を男手一つで学校にやっているタクシー運転手の主人公、民主化運動に顔を出す看護婦のヒロイン、元軍人のタクシー会社社長、子持ちで剽軽な主人公の同僚、キザだが憎めないタクシー客、弟の高校の教師、市民運動に参加する牧師らが、事件の経過とともに、それぞれの立場で悩み、さまざまな行動に出る。それらの描写がまことに丁寧。いちいち腑に落ちるように描いている。
ヒロインの素姓を主人公が知らないなど、韓国映画特有の説明不足や、ヒロイズムがオーバーな気もするが、かえってお国柄だと微笑ましく思えた。
現実の事件を換骨奪胎し、多様な視点から事件を考え、テーマを噛み砕き分かり易いドラマに作り、人間を丁寧に描きながら、コメディーリリーフも駆使することで楽しくストーリーを進めていく、映画の王道のひとつのあり方をちゃんと守っているからだ。映画全盛の時代、アメリカでも日本でも当たり前のように実行されていたことです。
この製作態度は、まったく立派。観客の常識と感性を信じる誠実さがなければできない芸当である。
<観客に対する誠意>、今の日本映画に一番欠けているものは、これではないですか?
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